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2009年11月 1日 (日)

センスとロマン

「最強デジタル麻雀」(著者:小倉孝)という評判になった麻雀の戦術書がある。この本で美的感覚を根拠とすることを否定していたが、私は感覚というものも案外有効なのではないかと思っている。
感覚や感性というと非理論的な印象を与えるが実はそうではない。人間の脳は無意識下で高度な理論的処理をしていることがしばしばある。

例えば、「むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へしばかりに行きました。」という文がある。この文の「は」と「が」を交換すると、「むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんは住んでいました。おじいさんが山へしばかりに行きました。」となる。前者の文では違和感は感じないが、後者の文では違和感を感じるだろう。ふつう初出のものには「は」を使わず「が」を使うからである。ここで強調したいのは、おじいさんとおばあさんが初出であることや助詞に関する一般的なセオリーを意識として認識していなくても、違和感を感じることができるということである。人間の無意識は、想像しているよりずっと理論的なのである。

「最強デジタル麻雀」の9頁に次のような局面が載っている。
東1局 西家1巡目
一三(1)(3)(4)(4)(5)(7)5699東白 ドラ8
この本ではここで打東を正着としている。筒子を(3)(4)(4)(5)とみるのはアナログで、デジタルは(1)(3)と(4)(4)と(5)(7)の3つの塔子とみるからだそうだ。しかし、私はそれはおかしいと思う(打(1)が正着か)。それだと重いという感覚がある。
実際、(1)(3)を両面に伸ばす(4)と(4)(4)を暗刻にする(4)と(5)(7)を両面に伸ばす(4)の受け入れがかぶっている。また、(4)(4)が両面に伸びて(3)(4)や(4)(5)となったときに、(2)や(6)の受け入れが(1)(3)や(5)(7)の受け入れとかぶっている。
ここで私が強調したいのは、いちいちどことどこの受け入れがかぶっているかなどの計算をしなくても、形で違和感を感じることができるということである。人間の脳にはそのような機能がある。
(このページはプロローグで実際に文を書いたのは小倉ではなく土井という人であることはことわっておく必要がある。しかし、この局面は小倉の実戦からで、小倉本人もここで東を切っている。)

それでは、人間の感性は絶対かというとそうでもないだろう。

例えば、「至高の守備」(著者:五十嵐毅)という本に次のような例が載っている。
五六七(2)(3)(4)(7)(8)(8)4577発 ドラ発
親のこの手で著者は(8)を切ると書いている。字牌のドラは「ポンされても押し返せる手牌になってから切る」べきというのがその根拠である。
私はその根拠に違和感を感じる。感性で打つならその根拠は「その方が得な気がするから」でなくてはならない。しかし、この場合本当にそうなっているだろうか。どうも私には「こういう打ち方がかっこいいから。」という感情が優先されているように見える。

また、同じ本に次のような例も載っている。
ダントツトップのオーラス 南家
(1)(3)(5)(6)(7)(9)(9)566778 ドラ(8)
親リーチが入っているときにこの聴牌が入り、著者はダマのまま危険牌をいくつか勝負している。リーチをかけずに危険牌を勝負した理由について、「自分が勝つ可能性がなくなったところで振り込む」愚はさけたかったからと著者は説明している。つまり、リーチをかけなければ、最終ツモ(鳴きが入らなければハイテイになる予定だった。)で上がれなかったときに安全牌を切れるからということである。この説明にも違和感を感じる。あまりにも限定された状況すぎる。本当に「その方が得な気がするから」そう打ったのか疑問である。

つまり、背景に理論がある感性で打つのはいいが、理論がない感性で打つのは問題だということである。言いかえれば、ロマンで打たずにセンスで打てということになる。

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